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私の話、貴方の話、セレクトショップ的な話、恋の話、夢の話、懐かしい話、カレーの話、府中の話、或いはニッチな日記。


by bb_sele
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店主の恋愛小説 第14話

目の前にあるのは真っ黒な闇だ。
何も見えないし、何も聴こえない。
私はどうしたのか?これは夢?
歩いても歩いても何かにぶつかる感触は無く、先に進んだ実感も無い。
もしかしたら歩いていないのかも・・・
足音さえ聴こえない。
宙に浮いているような感じでたじろいでいる私は、全てが無の世界に迷い込んでしまったのだと思った。西も東も、上も下も、前も後ろも、出口が有るのか無いのかも知らないくせに、私は出口を探している。
闇雲に彷徨っても、探しているものが見つかるとは思えない。だけど、私は探している。

時間という尺度はこの世界には無いみたい。ただ私は、闇を浮遊している。きっと。
「・・・・・・・」
何かが見える。黒じゃない色を持つ何かが・・・・
あれがこの闇からの出口だろうか?私はそこに向って歩み出した。

「・・・・・・!!」
がっかりしていた。出口だと思って辿り着いた先は、直径2cm程度のだったからだ。
何かが聴こえる。話し声のようなものが。
恐る恐る私はその穴を覗いた。
「!!!!!!!」

私がいた。そしてその隣に浩志がいた。
「やっぱり沖縄がいいな~♪」
「えっ、俺台湾とか行きたい!!」
「夏休みっぽくないじゃん!沖縄だってやっぱり」

憶えている。今の会話は浩志と2人で夏旅行の計画を建てていた時の場面だ。
なんで??
もう一度覗いて見た。
私は幸せそうに笑っている。もの凄く幸せそうに笑っている。

私はなんて幸せだったか。
結局、浩志が折れてこの時は沖縄に行ったっけ。
私は何で人を想いやれないのか。
私はなんてエゴイストだったか。私はなんて勝手だったか。
私は何で傷つけてしまったか。私は何で別れてしまったか。
私は、わたしは、ワタシハ・・・・幸せになりたかっただけなのに・・・・・
私は、求めていた幸せを自分で破壊してしまったんだ・・・・バカだ。

穴から見えるその過去は、ゆっくりと色を無くし、光を無くし、真っ黒な闇だけがそこに残った。
私は動く事が出来そうにないし、その気も無くなっていた。
感情も、思考能力も薄れていくのが何となく分かる。
きっと私はこのまま、闇の粒子になるんだ。

さっき見た過去は、きっと一番幸せな時。生涯で一番幸せな時。
最後に幸せな顔をして笑う自分を見れて本当に良かった。
そして、もう逢う事はない浩志を憶えて・・・・・
・・・・・・私の中の電池がもう切れそう・・・・・・

ありがとう
ごめんね
伝えたい言葉はあるけど、もう時間が無いみたい。時間切れだ。

「サ・ヨ・・・ナ・・・・・」


続く。
by bb_sele | 2007-02-24 21:08 | Web小説